側の器444

ある小雨日に林を歩いていたら、一本の杉の木に絡みついていた藤の枝が枯れ、地面に崩れて落ちていた。杉の木にはくっきりと藤の枝の締め後が残っていて、まるで自身の腕を思いきり掴まれているかのような感覚を覚えた。
締め後の凹みには雨の雫が螺旋を描いて少しずつ流れ下っている。
誰かに強く腕を掴まれる時、自身の腕は凹むのだ、とふと気がついた。その凹みには他者が流れる。