「Artifact」〈自然と人工の接続により現れる/視えないものを視た後に〉

2011年春、近所の川にはたくさんの樹木が流されてきていた。

私はその樹木の異様な様に驚かされた。春の芽生えの季節、若々しく輝く幼い葉が、幹から枝から、根を除いた全身いたるところから噴出するように生えていたのである。(人間から見たら瀕死の)根が土にもついていない、木の裸のような状態で。今思い返すと無彩色の記憶の中、その樹木の姿だけハレーションを起こしたように浮き上がっている。それは葉という形の光であった。そして、樹木の裸体を視てしまったような、視てはいけないものを視たような感覚に陥ったのである。

 

2006年から私がモチーフにしている「盆栽」は、自然物を人間の側に引き寄せ、人間のスケールに合わせて展開される。しかし、あの春流されてきた樹木は、人間のコントロールを超えた姿を晒していた。その現場に、たまたま私が居合わせ、ピントが合った。

それは、人間が自然に引き寄せられた瞬間ではなかったかと思う。

 

Artifact:アーチファクト〉とは自然科学の用語で、自然を対象とするはずの自然科学において、意図せずに人工のものが現れてしまうことを指す言葉である。実際の被写体には無い人工的な虚像である。例えば「ファントムリーフ」という有名な現象がある。それは、葉を半分に切ってからキルリアン写真の技法で撮影すると、切りとられてなくなった部分も発光し、元の葉の形を幻影=ファントムのように再現するというものだ。その幻影は、人工的なエラーによるものなのだが、人はその幻に視えない何かを視ようとしたのだろう。

 

自然物の構造とは、私たちの身体や感覚とは関係なく、ある特定のアルゴリズムに従い続けるものである。そこに私たちがピントを合わせていくことが、自然と人工の間に出現する何ものかを捉えるチャンスになるのではないか。

Artifact/001

2013

ペン、インク、ワトソン紙、パネル

ink and Chinese ink on Watoson-paper, mounted on panel

916mm×1171mm

 

Artifact/002

2013

ペン、インク、ワトソン紙、パネル

ink and Chinese ink on Watoson-paper, mounted on panel

530mm×335mm

個人蔵

Artifact/003

2013

ペン、インク、ワトソン紙、パネル

ink and Chinese ink on Watoson-paper, mounted on panel

410mm×318mm

japigozzi collection 

Artifact/004

2013

ペン、インク、ワトソン紙、パネル

ink and Chinese ink on Watoson-paper, mounted on panel

410mm×318mm

個人蔵

Artifact/005

2013

ペン、インク、ワトソン紙、パネル

ink and Chinese ink on Watoson-paper, mounted on panel

410mm×318mm

japigozzi collection

Artifact/006

2013

ペン、インク、ワトソン紙、パネル

ink and Chinese ink on Watoson-paper, mounted on panel

410mm×318mm

個人蔵

Artifact/008

2013

ペン、インク、ワトソン紙、パネル

ink and Chinese ink on Watoson-paper, mounted on panel

410mm×318mm

japigozzi collection

Artifact/009

2013

ペン、インク、ワトソン紙、パネル

ink and Chinese ink on Watoson-paper, mounted on panel

410mm×318mm

個人蔵